最近の物価高に対する対策として、消費税の減税、ガソリン暫定税率廃止、エネルギー価格への補助金などによる物価抑制が、多くの人の支持を得ています。
しかし、物価が上がったから、目につく物を一律に減税したり補助して物価を下げるという短絡的な政策は、圧倒的に不公平で、将来に大きなツケが回って来ることを理解しているのでしょうか。
すごく簡単な話なので、以下にグラフでわかりやすく説明します。
物価抑制は高所得者ほど得をする

このグラフは、所得に対する支出の関係を示しており、当然ですが高所得者ほど支出が多い傾向があります。
そして消費税やガソリン税の減税やエネルギー価格への補助金により物価を抑制すると、これも当然ですが、所得が上がるほど受益が大きくなります。つまり、物価抑制は、困っている人への恩恵が少なく、リッチな富裕層がよりリッチになる逆進的な仕組みなのです。
この受益額をグラフにしたのが下記になります(青線)。

グラフにすると一目瞭然ですが、高所得者は圧倒的に得をします。
食料品もガソリンも電気も、普段から切り詰めている低所得者は受益額が非常に少なく、その何倍も何十倍もリッチに消費している高所得者は、何倍も何十倍も得をするのです。
毎日高級食材を食べ、広い別荘などで光熱費を浪費し、燃費の悪い高級車を乗り回している人に、貴重な血税をたくさん支援することになるのです。
減税や補助金による物価抑制を支持している人は、これらを理解しているのでしょうか?
なお、一部の専門家と呼ばれている方々は、低所得者の方が家計に占める支出や食費の比率が高いため、消費税の減税は低所得者ほど恩恵が大きいと言っており、多くの人がそれを信じています。
しかし、恩恵を比率で比較できるのでしょうか?。
低所得者の方が家計に占める比率が高くても、高所得者より金額が低い=恩恵が少ないのです。気分的なお得感は大きいかもしれませんが。。。。
また、自民党などが言っている(2025年7月執筆時)全国民への一律給付は、高所得者に対しても給付するために選挙対策のバラマキではありますが、消費税やガソリン税の減税・補助金による物価抑制よりは、バラマキ以上に不適切な政策だと言えます(グラフの緑線)。
しかし、物価高に伴って株や土地価格は上がっており、また円安によって日本全体の国際的な収支は過去最高に儲かっており、その利益の多くは高所得者が得ています(海外保有株など価値増加、輸出関連企業の利益増加など)。
よって、高所得者に支援する必要は全く無いのです。
そして、無駄な支出は、将来、低所得者も含めた国民全体の負担が増加するだけでなく、経済低迷・少子化・国債の利払い増加にも繋がります。
また、ガソリンの減税を主張する人は、ガソリン税、石油石炭税、消費税などの多くの税がかかっており、さらに暫定の税率が上乗せされていることを根拠としていますが、他国と比較して燃料への課税も燃料価格も非常に安い状況であり、全く事実に反します。また、何十年も前に決められた税率が暫定であることは、化石燃料の使用削減が喫緊の課題である現代において、全く意味はありません。
確かに保有時の税(自動車税・重量税)は他国よりも高額であるものの、道路の建設・維持費や社会への多大な悪影響があることを考えれば、車の使用の少ない人に限って自動車税・重量税を下げる、つまり走行距離基準に変更することが妥当だと言えます。
車の税の国際比較については、「LRT大国のフランスが車保有税ゼロ!? 公共交通を救うのは車のコスト構造見直し」を参照ください。
最適な対策は
必要な人だけに必要な支援を
財政の基本は、最小の予算で最大の効果を上げることであり、
「必要な人だけ」に「必要十分な額」を支援するように設計されるべきです。
「必要な人」、つまり物価高によって困窮する人は、家計に余裕が無い中低所得者であり、
「必要な額」は、一般的に低所得者ほど多くなります。
具体的な方法は、
- 所得税を低所得者ほど減税
- 所得税減税で足らない分や非課税者は、直接給付や公的支援(生活保護・児童手当など)の増額
このように、所得に応じた支援制度(給付付き所得減税)にすれば、少ない予算で、困っている人だけにより多くの十分な支援を届けることができます。

物価は上がって良い! 物価に応じて支援が自動調整される仕組みを
そもそも、物価上昇を抑える必要はあるのでしょうか?
世界の中でほぼ日本だけが、長年、物価がほとんど上がらず、賃金も停滞してきました。その結果、他の先進国から見れば「物価が安い貧乏な国」となり、海外投資や海外旅行が難しくなったり、外国人に不動産を買い占められたり、輸入品が相対的に高くなったりして、多くの日本国民が深刻な悪影響を受けています。
必要なのは、物価上昇を抑えることではなく、物価が上がっても国民の手取りや購買力が確保される仕組みです。そのためには:
- 所得税の基礎控除や給与控除などを物価に連動させる
- 児童手当や生活保護などの給付も物価連動にする
補助金?、減税?、給付?などと右往左往し続けるのではなく、
物価に応じて自動的に調整される仕組みが必要です。
現在のように制度変更・検討を頻繁に行うことは、行政職員や国民に膨大な負担をかけています。国会議員にも、他にもやらなくてはいけない重要なことがたくさんあるはずです。
賃金を上げるために必要な改革
賃金が上がらない根本的な理由にも目を向けなければなりません。
現状では、多くの労働者が経営者と対等な交渉ができず、事実上「言いなり」で搾取される構造になっており、これが賃金が上がらない最大の理由です。
この対策には、
非正規を含むすべての労働者が、ストライキなど対等な労使交渉をできる環境を整えることです。
団体交渉権は憲法に定められた労働者の権利であり、それを正しく行使できるようにすることで、業務効率化やブラック企業の淘汰も一気に進み、「失われた30年」と言われる日本経済の低迷を終わらせることができると考えられます。
これらについては、「ドライバー不足の真の原因は2つ!これをやれば対策できる」に詳しく記載していますので、ご参考ください。
エネルギー価格抑制は多くの問題が
物の価格、特にガソリン、電気、ガスなどのエネルギー価格を下げることは、不公平さだけでなく、以下の多くの問題があります。
- 企業や消費者の省エネ動機が低下し、CO2削減が進まない
- 省エネ製品が売れず、脱炭素技術の開発が抑制され、国際競争力が低下する
- 公共交通運賃に対して自家用車の使用時費用が相対的に下がり、公共交通の衰退が進む
- 貨物輸送の効率化が進まず、運転手不足が解消しない
- 新品への買い替えが促進され、リサイクルやリユースが減少する
これらについては、「ガソリン価格は本当に下げるべき?実は自動車メーカーも望んでいない理由とは」にも詳しく記載していますので、ご参照ください。
消費税より炭素税
しかし、消費税を維持することが最適というわけではありません。
消費税は消費を抑制し、経済成長に悪影響を与える問題があります。
また、ガソリン税(燃料税)はEV車に課税されないなどの問題もあります。
このため、消費額や燃料給油量に対する課税ではなく、CO2の元になる炭素含有量に対して課税する炭素税に転換することが良いと考えられます。
それにより、CO2排出が多い物品ほど価格が高くなるため、ほぼ全ての国民がCO2排出抑制に自発的に取り組むようになると共に、低炭素技術の開発も促進され、国際競争力の向上にもつながります。
これらの詳細は、「消費税・ガソリン税の減税議論より炭素税への転換を」を参照ください。
なお、経済的余裕が無い人にも課税されるという逆進性も問題と言われており、炭素税でも同様ですが、既述の給付付き所得減税を恒久的に行えば、問題にはならないと考えられます。
結論:支援は「必要な人に、的確に」
物価高対策で最も重要なのは、「必要な人に、必要なだけ、無駄なく支援する」ことです。
- 高所得者に多くの恩恵が行くような一律減税ではなく、
- 所得に応じた減税と給付を組み合わせ、
- 物価に応じて自動調整される制度へ。
そして根本対策は、対等な労使交渉できる環境を作って賃上げすること。
これが、日本社会全体の安定と持続可能な成長につながる現実的な道です。

