ドライバー不足の真の原因は2つ!これをやれば対策できる

運転手不足の根本原因 労働者が経営者と対等に 交渉ができない 費用負担が公正な 受益者・原因者負担に なっていない 公共交通

昨今、残業上限規制等の働き方改革の推進により、トラック等様々な乗り物の運転手不足が深刻化しており、荷物が輸送できない、バスや鉄道を減便・廃止せざるを得ない、タクシーが来ない等、輸送や公共交通が深刻な事態に陥りつつあります。この対策として、高速道路の大型車最高速度アップや、外国人労働者の受け入れ、個人タクシー運転手の年齢上限緩和、自動運転推進等、様々な施策が検討されていますが、どれも根本的な改善にはならないと思われます。

運転手不足の原因は2つ

このような状況に陥ってしまった根本的原因は、主に下記2つだと考えます。

①労働者が経営者と対等に交渉ができない

②費用負担が公正な受益者・原因者負担になっていない

それぞれについて、以下に説明します。

①労働者が経営者と対等に交渉ができない

本来は労働力が不足すれば価格・賃金が上がる

日本や世界の多くの国が採用している資本主義経済では、需要と供給のバランスによって物やサービス、労働力の価格・賃金が自動的に調整される仕組み(市場原理)があります。

つまり、需要が増大して供給が不足すれば価格・賃金が上がり、それによって、需要が抑制されると共に、代替手段が発達したり、コストを抑えるための様々な工夫(効率化や技術開発)が活発化されるという動き(生産要素の最適配分)が生じます。

そして、賃金上昇と新技術・新ビジネスの発展が、経済発展や生活レベル向上をもたらすことになるため、この市場原理は資本主義経済の鍵とも言える非常に重要な仕組みだと言えます。

市場原理の説明図。労働力等の需要が供給より大きくなれば、賃金が上昇し、需要抑制、代替手段の発達、効率化、経済発展をもたらす。
市場原理が働いていない

運輸業界についても、本来は、労働力が不足すれば賃金や労働条件が向上し、運賃が上昇することで、運輸業務の効率化他の輸送手段への転換が進むことが市場原理として正常な動きです。

しかし、昨今、運転手不足が深刻になってるにもかかわらず、賃金や労働条件はほとんど改善しておらず、トラックに比べて圧倒的に効率的な鉄道や船舶輸送への転換もあまり進まず、再配達無料制度等もそのまま維持されています。つまり、市場原理が働いていない、異常な状態であると言えます。

対等に労使交渉ができる環境がない

この市場原理が働かない主な理由は、労働者が経営者と対等に交渉をできる環境が無いためと考えられます。

現状では、労働組合が無い会社も多く、あってもストライキ等を含む強い交渉はほとんど行われておらず、転職時等も賃金を交渉することがあまり一般的ではありません。また、非正規労働者や個人事業主は労働組合に入れなかったり、組合費が高くて入らない人も多いようです。また、転職をすると退職金総額が減ったり、ストライキ時は収入が無くなる等の問題もあります。

このように、労働者が経営者と対等に団体交渉できない状況におかれていることは、憲法第28条で保障されている労働者の3つの権利(団結権、団体交渉権、団体行動権)が侵害されている状態でもあり、重大な問題だと言えます。

なお、タクシー運賃については、上限を国に決められていて認可を受ける必要があるため、制度的に自由に交渉できない可能性が高く、社会主義のような業界であると言えます。

アメリカのトラック運転手の月給は140万円

なお、日本におけるストライキ等の労働争議件数はピーク時に比べて数十分の1に激減していますが1、アメリカでは近年も大規模なストライキが頻繁に発生しています。また、中途入社時もアメリカ等では7割の人が賃金交渉をしていますが日本では3割に留まり、入社後の個人的な賃金交渉を行う割合も日本より大幅に高いとの報告があります2

これらにより、アメリカの大手運送会社のトラック運転手の月給が140万円になったと報道されています3

日本の現状は労働搾取

これらの状況により、日本では低賃金で労働環境が悪くてもやむを得ず働き続けるしかない労働者が多いと考えられ、経営者は文句を言えない労働者に依存して低賃金・長時間労働を強い続けてきました。これは、労働の搾取であり、独裁や奴隷制度にも近い状態だと言えます。

そして、経営者は非効率なままのブラック企業をずるずると存続させ、コストを掛けて効率化を行うホワイト企業の成長を阻害してきたと考えられます。

全ての労働者が対等に団体交渉できる仕組みづくりを

この対策としては、非正規や個人事業主も含めた全ての労働者が対等に賃金や労働条件の団体交渉ができる公的な組織や、不当な低賃金や転職者に不利な退職金制度等を強制的に是正させられる組織等を作ったり、労働組合活動や労使交渉において必要となる労働者の費用を国が補填する等、憲法に定められた労働者の権利を確実に守るためのあらゆる手段を講じる必要があると言えます。

賃金が上がれば就労者が増え、効率化が進む

これらの対策によって、全ての労働者が経営者と対等に交渉ができるようになれば、運転手の賃金や労働条件が大幅に改善されて就労者が増えます

それと共に輸送運賃も上がるため、それらを下げるための様々な工夫を行う動機が生まれ、コストを掛けて業務効率化を行ったり、輸送日数や再配達有無等のニーズに合わせた多彩なサービスが生まれたり、鉄道や船等への転換等が起こり、必要な労働力が減少することが考えられます。

なお、鉄道貨物は作業者1人あたりの輸送量がトラックの65倍船舶では200倍と言われ、圧倒的に効率的です。

対等な交渉をすれば運転手や非正規労働者の賃金は大幅に上がる

なお、職業運転手は業務中の肉体的及び精神的ストレスが大きく、死亡や傷害を負うリスクも高く、事故を起こした場合の責任も重く、時間が不規則で拘束時間も長いこと等から、本来は他のデスクワーク等よりも格段に賃金が高くなることが妥当だと言えます。

また、非正規社員やパートタイム労働者についても、契約期間や労働日時について経営者側の自由度が高いことや、退職金が不要であること等、経営者にとってメリットが多くあることから、同じ仕事であれば正社員よりも賃金(時給)が高くなることが妥当だと考えられます。

このため、対等な労使交渉ができるようになれば、これら職種や雇用形態の賃金は大幅に上昇し、それによって省人化や正社員化の流れが強まると考えられます。

運賃の上昇は経済成長に繋がる

また、労働者の賃金が上がることで様々な物やサービスの価格が上がり、消費者が困るという懸念を持つ方も多いと思います。

しかし、価格上昇分はどこかに消えてなくなるわけではなく、主に低所得者の賃金上昇分に還元されるために貧富の差が縮小することが考えられます。
また、物価上昇は様々な業務について効率化を促進する動機となって無駄なコストが削減されるため、全ての消費者の経済的余裕が改善(つまり、経済が成長)する方向に向かいます。

また、賃金や物価が上がることにより、燃料等の輸入品に関連する費用負担が相対的に減ったり海外への渡航や投資が有利になることが考えられます。

なお、年金や生活保護等の社会保障については、物価上昇に合わせて迅速に金額を増加させる必要があることは言うまでもありません。

また、地方のバスや鉄道については、運転手の賃金を上げるために運賃も上げる必要があり、それにより利用者がさらに減少するので、利益率を向上する対策が必須です。これについては、次項で述べます。

②費用負担が公正な受益者・原因者負担になっていない

価格が安過ぎることが仕事を増やし効率化を阻害

これは、宅配便の再配達が無料であることが例として挙げられます。配達員に再配達という労働をさせて利用者が便益を得るにもかかわらず料金が無料であることが、再配達の利用を増やしていると共に、再配達削減に有効である宅配ボックス等の普及を妨げています。

つまり、費用負担が公正な受益者・原因者負担になっておらず、使用時の費用が無料や安過ぎることが、前項で述べた賃金が上がらない場合と同様に、労働力需要を増大させると共に、効率化や代替手段の発展・普及を阻害し、運転手不足をもたらしていると言えます。

再配達以外にも、有料会員は送料無料や、配送をまとめても別々でも同一送料、配達日が最短しか選べない、送料が全国一律、配送先が秘境の山奥でも同一送料等、費用負担が公正な受益者・原因者負担になっていない例が数多くあり、同様の問題の原因となっていると考えられます。

そして、これらの安すぎる使用時費用を生み出しているのも、前項で述べた労使交渉が対等にできないことが原因です。

また、トラックの運行費用が安過ぎることも、圧倒的に効率的で安全性が高い鉄道や船舶への転換を抑制しています。例えば、大型車による道路損傷度合いは普通車の数千~数万倍なのに高速道路料金は普通車の1.65倍でしかなく、普通車の利用者が大型トラック起因による道路補修費用の大部分を負担し、非効率なトラックの使用を促進しています。

さらに、トラックは鉄道貨物に対して運転手の数が65倍必要であり、

なお、トラック等の自動車と鉄道とのメリット・デメリット比較詳細については、以下を参照ください。

自家用車が定額使い放題に近いことが公共交通の経営を悪化させている

また、バス等の公共交通の運転手不足についても、自家用車の費用が公正な受益者・原因者負担になっておらず使用時の費用が安過ぎる、つまり定額使い放題に近いことが、本来効率的なはずの代替手段である公共交通の利用者を減らして経営を悪化させ、運転手の賃金が上がらない原因になっていると考えられます。

具体的には、自家用車の自動車税や重量税、自賠責保険料は定額、任意保険料も実施的に定額で、訪問先の駐車場料金も都心部以外は実質無料(商品等の価格に含まれる)、車の燃費は過去30年で3倍以上に向上していることで、車の使用時費用は公共交通運賃の数分の1以下、複数乗車では10分の1以下に安くなっています。
当然、公共交通を使う人は非常に少なく、経営は圧倒的に非効率で赤字となり、運転手へ支払える賃金は極めて少なくなります。

他で例えれば、ほとんど定額使い放題で便利な携帯電話を契約している人が大多数なのに、使用料が高くて不便な公衆電話事業で利益を得ようとしているようなものです。少なくとも時間当たりの携帯電話使用料を公衆電話と同等以上にしない限り、不可能であることは明白です。

なお、これについては、以下で詳しく記載していますので、ご参照ください。

また、再配達や自家用車の使用増加は、運転手の不足だけでなく、CO2排出、渋滞の悪化、道路や車両の損耗による資源の消費、騒音発生、交通事故の増加、公共交通の衰退等、社会に対する様々な悪影響(社会的費用)も発生させていると共に、再配達や自家用車の使用が少ない人に不公平感を生じさせています。

このため、特に社会へ悪影響を与える物やサービスの費用については、可能な限り、社会的費用も含めた公正な受益者・原因者負担にして、悪影響や不公平を抑制すべきだと言えます。

それにより、消費者は社会へ悪影響を与える物やサービス(再配達、自家用車等)をなるべく使わないように工夫をしたり(宅配ボックス設置、自転車や公共交通の使用等)、企業は社会への悪影響の少ない様々な物やサービスを提供するようになります(ゆっくり配送、公共交通の新規路線開設等)。そして、これらによりトラックや自家用車の交通量が減って既述の社会への悪影響を減らすことができます。

なお、近年は様々な物やサービスでサブスク(定額使い放題)一定期間無料等の価格設定が見られ、それらは企業活動の自由として尊重されるべきですが、それが社会的悪影響や不公平感を増大させるものであればコンプライアンスやSDGs的に明らかに不適切であり、何らかの形で制限することが社会の利益になります。

上記二つの問題は、他の分野にも当てはまる

「労働者が経営者と対等に交渉ができない」ことと、「費用負担が公正な受益者・原因者負担になっていない」ために多くの問題が生じていることは、輸送交通分野だけでなく多くの分野に当てはまります。
そして、これらが日本が産業競争力等の様々な面で世界から取り残されて停滞していたり、少子化等主要因だと考えられます。

軽自動車税制は多くの弊害を生んでいる

例えば、自動車産業についても、車体の大きさやエンジン排気量(エンジン内部の寸法であって実際の出力とは無関係)によって定額の自動車税を安くしている軽自動車制度により、企業や消費者、社会の全てに、経済性、安全性、環境性の不利益を与え続けています。

具体的には、エンジン排気量の制限により燃費が悪化し、車体の大きさの制限により衝突安全性が低下し、それらの対策や日本専用に別途開発するための余分なコストと労力が掛かっていることで、企業の国際競争力や従業員の賃金が低下し、消費者は高い商品を買わされています(筆者は軽自動車も製造する自動車メーカーでエンジン等の開発に長年従事し、これら弊害に苦悩してきました)。
また、軽自動車税についても、年間走行距離が長く道路や環境に多大な悪影響を与えている車も、ほとんど走らない車も同一の税額であり、明らかに不公平です。

このような弊害だらけの軽自動車税制を、例えば、環境性能や道路損傷度合い、安全性能、ユニバーサル性等を鑑みた車種や用途ごとの税額に、走行距離を掛ける税制にして公正な受益者・原因者負担にすれば、上記の軽自動車の弊害は無くなり、企業や消費者、社会の全てがメリットを得られると考えられます。

また、CO2削減のためにEV(電気自動車)に高額な補助金を出すことが、よりCO2排出が少ない公共交通や自転車の利用が減る等、様々な弊害を生んでいることも、費用負担が公正な受益者・原因者負担になっていない例です。
これについては、下記に詳しく記載しておりますので、ご参照ください。

多くの団体組織の意思決定が独裁的

また、労働者が経営者と対等に交渉ができない独裁的で奴隷的な仕組みについては、賃金交渉だけでなく、様々な団体組織の意思決定制度にも当てはまると考えられます。

つまり、人事や給与を人質にして一部の偉い人だけが決定権を独占し、その人の保身等の都合に影響されて組織が動くことで、不適切な決定がなされたり、問題が隠蔽されて不祥事が起きたりすることが多く発生しています。

また、警察が危険な道路を放置する等の理不尽な対応を取り続けるのも、このような仕組みが一因である可能性が考えられます。

この対策として、企業や団体の意思決定過程人事評価制度に、議会等と同様の何らかの民主的な仕組み(関係者全員の多数決等)を取り入れる必要があるのではないかと思います。

若者の賃金抑制が少子化を生んでいる

近年、日本では少子化が大きな問題となっており、2070年には人口が31%減少し(2020年比)、65歳以上が39%になるため4、経済が大変困難な状況になると予測されています。
この主要な原因が若年層の貧困や経済不安であり、それを招いているのが、労働者が経営者と対等に交渉ができないことや、それによって産業の効率化が抑制され、経済成長が停滞していることです。
つまり、若年層の賃金が不当に抑制されることで、将来不安が増大したり、自己肯定感が低下して、結婚して子供を持つ意欲が失われているということです。

公正で合理的なルールが、社会の発展に繋がる

以上に述べたことは、「関係者全員が対等な話し合いや多数決で物事を決める」ことや、「多く迷惑を掛けた人や便益を受けた人は多く払う」という、全く当たり前の考え方であり、それを実現できる制度にしていくことで、望ましい社会になっていくのだと思います。

なお、制度を変えることは時間がかかりますが、行政や業界団体等に数多くの人の意見を繰り返し伝えていくことが必要だと思いますので、ご賛同いただける方はご協力いただけると幸いです。

また、ルールのあるべき姿についての詳細は以下に記載していますので、ご参照ください。

参考文献

  1. ストライキとは 賃上げなど求め就業を拒否 (日本経済新聞) ↩︎
  2. なぜ海外では7割が賃金交渉をしているのに、日本は3割に留まるのか?(リクルートワークス研究所) ↩︎
  3. 驚きの給与が発覚!米大手運送会社「UPS」ドライバーの週の稼ぎは?(GetNavi web) ↩︎
  4. 将来推計人口(令和5年推計)の概要(厚生労働省) ↩︎
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