車と戦える公共交通へ:利便性と収益性の向上策を元自動車エンジニアが提案する

リスボンのトラム 公共交通

自家用車の過度な依存は、交通事故、公共交通の衰退、温室効果ガス増加、渋滞、大気汚染や運動不足による健康悪化、都市の拡散によるインフラコスト増大など、様々な深刻な影響を長年にわたり社会に与え続けており、公共交通への転換が急務であると以前より言われています。

しかし、大都市部以外の公共交通は衰退が止まらず、益々、車依存の社会が進行している現状です。

なぜ、私達は車を選ぶのでしょうか?

  1. 公共交通は使用時費用と速達性で劣っている
  2. 速達性を改善する6つの場面
    1. 信号や歩行者横断の待ち時間の解消
      1. 公共交通優先信号やラウンドアバウトの設置
    2. 渋滞の回避
      1. 道路中央に優先レーンを設ける
      2. 植栽、電柱、中央分離帯の撤去、車線幅縮小で優先レーンを設ける
      3. 反対車線を通す
      4. 一方通行にする
      5. バス専用道路にする
      6. 幅の狭いロードトレインや路面電車を走らせる
      7. バスと路面電車の走行路は共用が原則
      8. 一般車の通行制限
      9. バス優先にすれば自動運転が容易になる
      10. 路面電車優先にすれば、長編成が可能になる
    3. 乗降時間の短縮
      1. 信用乗車方式に
      2. バス出入口のバリアフリー化
    4. 発進時の着席待ち時間の解消
      1. EVバスなら滑らかに加速
    5. 乗り換え時間の短縮
      1. バス停はホーム直近に
      2. バス停は並列に配置
      3. ホーム出入口を増設
      4. 鉄道駅同士の距離最短化、乗換駅新設 
      5. 駐輪場もホーム出入口の直近に
      6. バス停にも駐輪場を
      7. 踏切の安全性向上
        1. AI画像解析による高精度な障害物検知機設置
        2. 確実に進入を防ぐ
        3. 人が介在しない非常ブレーキシステムに
        4. レールの溝を塞ぐ部品が様々ある
        5. 踏切の道路幅が狭すぎる
        6. 距離が長い斜め横断を強いている
        7. 踏切を使えば鉄道とバスが並んで発着できる
    6. ラストワンマイルモビリティの改善
      1. 停留所に屋根付き駐輪場を設置
      2. 屋根付き電動アシスト3輪自転車の普及
      3. レンタル手続きを簡単に
      4. 低速ならレンタルモビリティを無人回送できる?
    7. インフラやサービスを実費負担にして、都市のコンパクト化推進を
    8. 運行頻度向上や路線の拡充は潜在的利用者数に依存する
    9. 速達化によって運行本数を増やせる
  3. 収益性の改善策
    1. 交通手段の統合・集約化
    2. 運賃の適正化
      1. 距離制運賃にして短距離を安く
      2. 定期券を廃止して通常運賃を下げる
      3. 子供・学生・高齢者・障害者割引は廃止して行政が直接給付
      4. 閑散区間・時間の運賃アップ
      5. 現金払い手数料
      6. 全てのインフラ使用料を、実コスト+社会的コスト基準の従量制に
    3. 赤字区間の税金での補填
    4. 商業施設事業者の負担による公共交通の整備
  4. 最大の問題は行政の改善意欲の低さ
  5. 参考資料

公共交通は使用時費用と速達性で劣っている

私達が交通手段を選ぶ際は、主に使用時の費用と所要時間を比べて、安くて早い方を選ぶと思います。
都心部以外では、現状では使用時費用も所要時間(速達性)も車の方が圧倒的に有利な場合が多いため、当然、大多数の人が車を選ぶことになります。

この現状を変えて公共交通への転換を進めるためには、使用時費用と速達性の競争力で公共交通が上回ることが必要です。使用時費用については以下の投稿に記載していますので参照下さい。

公共交通の速達性についても多くの改善余地があると考えられ、本稿で車と戦える公共交通を提案したいと思います。また、公共交通の維持、発展のためには収益性の向上も併せて必要であるため、これについての改善案も後述します。

速達性を改善する6つの場面

公共交通使用時の速達性を車同等に改善するには、以下6つの場面での改善が考えられます。

  • 信号や歩行者横断待ち(バス、路面電車)
  • 渋滞(バス)
  • 乗降時間(バス、路面電車)
  • 発進時の着席待ち(バス)
  • 乗り換え
  • ラストワンマイル

信号や歩行者横断の待ち時間の解消

バスや路面電車は信号などで止まることが多く路面電車の運行時間の31%が信号待ちとのデータがあります1。この対策として公共交通優先信号が導入されている場所もありますが、ごく一部の区間に限られており、その理由は、一般車への影響を憂慮しているためと推測されます。

公共交通優先信号やラウンドアバウトの設置

しかし、公共交通と一般車について道路上の優先度を考えてみると、冒頭に挙げた様々な面で公共交通の方が圧倒的に優れているため、全ての営業区間において最優先で通行させることが妥当だと考えられます。
また、歩行者に対しても公共交通車両を優先させる方が、多くの人が速く移動できるという点で公共の利益になります。

つまり、バス、路面電車の全ての区間について公共交通優先信号を導入し、信号の無い交差点や横断歩道についても公共交通優先(徐行)とし、バス優先レーン導入と併せて、停留所以外は一切停止せずに走行すれば大幅な時間短縮が可能です。なお、一般の鉄道の踏切や道路併用区間は本提案と同じ様に車や歩行者に対して完全優先であり、1両編成の電車であっても止まることはありません。その理由は、公共性が高いためであり多くの人が納得しているため、同じ公共交通であるバスや路面電車においても同じ考えを適用すべきです。つまり、本提案はバスや路面電車を一般鉄道と同様の扱いにしたものと言えます。
なお、現行の法律上では路面電車より歩行者優先ですが、実際は横断歩道であっても車両はほとんど止まらず実質的に車両優先であるため、バスも含めて車両優先とすることは妥当だと言えます。

また、公共交通優先信号は車両の接近を感知するシステムが必要でコストが掛かる問題があります。また、信号が無い交差点での右折など、バスや路面電車が非優先となる交差点においては、優先通行ができません。
この対策として、交差点を信号が不要であるラウンドアバウト(環状交差点)に変更し、「バス・路面電車優先」の標識を設置するだけで、一般の信号交差点よりも低コストで簡易的に優先通行が可能になります。つまり、ラウンドアバウトでは全ての車両が速度を落とすため、信号が無くてもバス・路面電車を優先通行させることができます。特に、ラウンドアバウトへの流入路を複数車線とし、1つの車線をバス・路面電車優先とすれば、より確実に優先走行が可能となります。

なお、ラウンドアバウトの利点などについては下記リンクに詳細を記載していますので、参照ください。

また、バス停でバスが発車して本線に合流する場合など、法規でバスが優先であるにもかかわらず、道路標示が法規とは逆の本線優先と読み取れるように標示されているため、道路標示をバスが優先であることが容易に理解できるように変更することも必要だと考えられます。

なお、バスや路面電車を安全に優先走行させるには、車体前部に黄色の回転灯を設置すると共に注意音声や警告音を鳴らしながら走行し、緊急車両に近い位置づけにすることも必要です。

また、公共交通優先信号の導入により一般車の渋滞が悪化する懸念が生じますが、公共交通と交差する交通の信号を公共交通接近時に赤ではなく赤点滅(一時停止)にすることで、公共交通車両通過前後の待ち時間を最小化することができます。
また、バスや路面電車は乗用車40~50台分に相当するため、本稿の提案により公共交通の利便性が向上して車を使う人が減れば渋滞は悪化しないと考えられます。

また、公共交通優先信号や優先レーンの必要性については、下記に詳しく書いていますので、ご参照ください。

渋滞の回避

バスや一部の路面電車では渋滞に巻き込まれることが多く、渋滞対策としてバス優先や専用レーンが導入されている場所がありますが、これも一部に限られています。この理由として、前項と同じく一般車への影響が大きいことと、道路が狭くてバスレーンが設けられないことが考えられます。

道路中央に優先レーンを設ける

道路が狭いことは対策が難しいですが、往復1車線ずつの道路でも路肩のスペースがあれば、往復車線の中央に両方向走行できるバス優先レーンを設け、バスが近づいた時はバス接近表示機で両車線の車に知らせて路肩に寄せ、バスレーンを空けることが考えられます。鉄道や路面電車では同様の場所があります(例:江ノ島電鉄の腰越~江ノ島間)。

なお、専用や優先レーンを走行してバスの走行を妨害する一般車の対策については、バスに搭載したAIカメラなどにより自動取り締まり・罰金請求書の自動送付が欧州などでは一般的に行われています。

植栽、電柱、中央分離帯の撤去、車線幅縮小で優先レーンを設ける

歩道や路肩には植栽や電柱のスペースがありますが、渋滞する場所に限り、これらを撤去することで、優先レーンを設けられる可能性があります。電柱を撤去するには、道路外の土地に移設したり、隣接する建物の壁面で電線を支持する方法があります。信号機も遠くにある支柱や建物壁面からワイヤーで吊る方法が海外ではよく見られます。 
また、広い車線や歩道を狭くしたり、中央分離帯を撤去したり、自転車レーンをバスレーンと共有したりすることで、優先レーンを設けられる場所も多くあります。 

反対車線を通す

また、渋滞区間が長くない場所では、反対車線をバス優先レーンとし、その入り口の信号をバス接近時に赤にして一般車を止めることも考えられます。道路工事による片側交互通行のようなイメージです(渋滞車列が工事現場に相当)。なお、この案は反対車線が渋滞していない場合にのみ成立するため、バス運転手の目視によってバスレーンが通行可能な場合に限り、手動で信号を切り替える方法が考えられます。
また、路面電車において類似の形態の場所があります(例:とさでん交通の曙町東町付近)。下記写真の場所は渋滞回避が目的ではなく線路が単線であるためにこのような形になっており、車の正面から電車が近づいて来たら車は反対車線に避けます。

交差点で渋滞している場合、信号制御によりバスを反対車線を通す案の図。
バスと交差する方向の信号は、バスが来る方向以外の矢印と赤を交互に点滅させ、「バス接近」の表示機も設置する。
反対車線を通るバスレーンの案(筆者作成)

なお、上記のように一時的に一般車の通行を制限する場合、バスの運行頻度が非常に高いと一般車が殆ど通行できなくなってしまうため、その区間のバスを輸送力が大きい連接バスや長編成の路面電車などに置き換えて運行頻度を抑えることで、一般車の通行を確保できると共に、必要な運転手の数が減ることによるコスト低減も可能と考えられます。なお、それにより乗り換えが発生することになりますが、乗り継ぎを考慮したダイヤにすると共に乗り換えを最短距離で行えるようにすれば、都市鉄道での各停と快速などとの乗り継ぎのように、それほど不便にはならないと思われます。

また、一般車の通行が困難になることは車からバスへの転換のモチベーションになることであり、限られた幅の道路でできるだけ多くの人を速く移動させるという公共利益の最大化のためには、やむを得ないことであると言えます。

一方通行にする

近くに並行する道路がある場合は、双方向の道路を一方通行に変更することでバス優先レーンを設けられます。それだけでなく、交差点での渋滞が減ったり、自転車レーンや駐輪場、荷捌き場などを設置できるメリットもあります。このような一方通行路は、欧州などの都市で良く見られます。

バス専用道路にする

駅の周辺など、細い道路が何本もある場所は、そのうちの一本をバスなどの公共交通専用とすることで、渋滞を回避できます。その道路に面した店や住宅へ車でのアクセスが必要な場合は、居住者や配送車に限定して通行を許可することで対応できます。

幅の狭いロードトレインや路面電車を走らせる

また、ヨーロッパの旧市街などで観光用としても利用されている車幅の狭いロードトレイン(多連結の小型バス:下記写真)を導入すれば、輸送力を確保しつつ、狭い道でもバスレーンを設けることが可能と考えられます。

また、路面電車は広い道路に敷設することが多いですが、内輪差が無いことで曲線部での必要幅がバスよりも少ないため、狭い屈曲路に敷設して車幅の狭い車両を走らせ、路面電車優先としている場所もあります(下記写真)。

バスと路面電車の走行路は共用が原則

バスと路面電車が並走している区間では、路面電車の軌道内にバスを走らせ、停留所も共用している場所も海外では数多くあります(下記写真)。
そもそも、路面電車とバスは利用者からすれば大差無く、路面電車の本質的目的は輸送力増やすために全長を長くしても内輪差が生じないことであるため、別々の場所を走らせる必要性は全くありません。道路渋滞の抑制と乗り換え時間の短縮のため、共用を原則とすることが妥当です。
日本では、バスと路面電車の停留所が離れているだけでなく、事業者同士の競合が問題になることが多いですが、利用者からすれば本当に不利益なことであり、自家用車に対する競争力向上という共通の目標に対して各事業者が協力することが不可欠です。 

一般車の通行制限

道路交通が非常に集中するエリア内については、一般車の乗り入れを制限している場所(トランジットモールや居住者以外進入禁止区域など)が海外の都市では数多くあり2、日本も導入を促進するべきです。
なお、制限をラッシュ時間帯だけに限定したり、事業用や身障者用などの車を制限から除外したり、車から公共交通への乗り換え拠点を整備するなどにより、反対が少なく導入できると考えられます。

バス優先にすれば自動運転が容易になる

なお、近年導入が試行されている自動運転バスなども、上記のように完全優先にして他の交通に全く妨害されないようにすれば、駐車車両を避けたり優先車を待つなどの難しい対応を排除でき、実用化が大幅に容易になると考えられます。
実際、一般道の一部区間を信号で制限して自動運転バスを通行させている場所もあります(例:秋田県上小阿仁村3)。
また、完全優先の自動運転バスと類似の形態である無人搬送車(AGV)が工場内などで数十年前から広く普及していることからも、優先通行が普及促進のために非常に重要であると言えます。

路面電車優先にすれば、長編成が可能になる

バスや路面電車の利用者が増加することで、車内の混雑や乗客の積み残しの問題が発生しています(オーバーツーリズムなど)。その対策として単に運行台数を増やすことは、それらの渋滞や運転手不足などの問題が出てくるため、連接バスを投入したり、バスレーンに線路を敷設して長編成の路面電車を導入することが考えられます。
しかしながら、日本では交差点での停止時の他交通への影響を考慮して、全長の制限(バス:18m、路面電車:30m)があり、長編成化が不可能という問題があります。
しかし、停留所以外止まらないようになれば全長の制限は不要となるため(一般鉄道と同じ)、海外のように長編成(3連接バス:30m程度、LRT:80~100m)での大量輸送が可能となります。

乗降時間の短縮

信用乗車方式に

駅や停留所での乗降時、路面電車やバス、一部の地方鉄道では、運転手が運賃授受確認を行うため、乗客が運転手の所まで行く必要があり、また1人ずつしか運賃授受ができず、混雑時は非常に時間がかかっています。
しかし、運転手や車両の目的は人を可能な限り速く移動させることであり、運賃の授受をすることではありません。 
このため、車両の全ての出入口や停留所にICカード読み取り機などを設置し、乗客各自が料金支払いを行う信用乗車方式が最適であり、欧州などでは広く普及しています。一方で、不正乗車を完全には防げないため、国内では非常に少ないようです4

しかし、ごく少数の不正を行う人を取り締まるために大多数の人の利便性が制限されることは非合理的であり、乗降時間短縮を最優先として信用乗車を全ての公共交通で採用することが社会全体の幸福になります。そして、不正乗車対策の財源として運賃アップや税金投入を行っても、その金額は社会全体の利益に対してごくわずかだと考えられます。
他で例えれば、一般の商店や飲食店の出入口に改札は無く、客各自が自主的にレジに行って支払いを行っていることが挙げられ、特に近年はセルフレジも増えており、日本の公共交通だけがむしろ特殊であると言えます。

また、信用乗車では全ての出入口から乗降でき、車内移動も不要であるため、出入口の数を増やすことで更なる乗降時間短縮や、編成を長くして乗車定員を増やすことも可能であり、バリアフリー性も高いため、非常にメリットが大きいと言えます。

また、信用乗車方式では現金払いの乗客は停留所に設置されている券売機や近隣の売店で、チケットやICカードなどを購入することが一般的ですが、券売機などの設置・維持費用は、券売機使用時に手数料を徴収することで賄えます。
また、やむを得ず車内で支払いをする場合は乗客全員の移動遅延と運転手の労働時間延長分の高額な手数料を課すことが公平であり、それによって車内支払い者を抑制できます。

なお、信用乗車における不正乗車対策としては、抜き打ち検査が古くから行われていますが、昨今、非常に低コスト化しているAIカメラを多数設置して不正乗車を検知し、警告や取り締まりを行うことも有効だと考えられます。

バス出入口のバリアフリー化

運賃授受以外の問題点として、現状のバスの多くは車椅子の乗降時に運転手がスロープをセットして介助する時間がかかっており、ベビーカーも出入口や歩道の段差により時間がかかることがあります。この対策として、渡り板が毎回自動的に出てくるバス(例:ブラジル・クリチバのBRT5)や、歩道を乗降口の高さに合わせると共に隙間を少なくして停車させる正着技術(例:日本道路 Plus Stop縁石6)を導入することで、時間短縮とバリアフリー化を図ることができます。

発進時の着席待ち時間の解消

EVバスなら滑らかに加速

現状では、乗客が着席するまで発進を待つことが多いですが、この理由は、発進加速時の駆動力の変動により乗客が転倒することを防ぐためと考えられます。この待ち時間を解消する方法として、駆動力の変化を車両制御で抑制して滑らかに発進・加速させることが考えられます。特に、電動車であれば高精度な制御が可能であり、CO2削減のためにも、電動車の普及を早急に進めるべきです。

乗り換え時間の短縮

駅によっては、バスや路面電車、自転車などから鉄道に乗り換える際の歩行距離が非常に長い場合があり、公共交通利用が選ばれない大きな理由の一つになっています。
例えば、筆者がよく使用する横浜市営地下鉄のセンター南駅は、ニュータウン内に計画的に作られたそれほど大きくない駅にも関わらず、1番遠いバス停から駅のホームまで健常者が徒歩で約5分30秒かかります。高齢者や子供、障害者などはその何倍もの時間と多大な労力が必要であり、特に悪天候や酷暑、極寒時は大変な苦労を強いる状況になるため、ユニバーサル性(弱者への配慮)の点でも、大きな問題であると言えます。
この原因と対策案として以下3点が考えられます。

バス停はホーム直近に

乗り換え距離が長い1つ目の原因は、バス停(ロータリー)が駅舎から離れていることです。この理由は、駅直近にパチンコ屋などの商業施設などを設けるためと推測されますが、駅の本来の役割は鉄道と他の交通手段とを乗り換える場所であり、鉄道を利用しない人も多い商業施設を優先して鉄道利用者が不便になることは本末転倒です。このため、バス停をホーム直下などの最短距離の場所に設置すべきです。

また、現状のホーム直下の歩行者通路は趣味サークルの展示などに使われていて通行の障害になっていたり、無駄に広い歩行者広場があったり、駅舎のすぐ隣に商業施設の駐車場があって渋滞を発生させるなど、様々な施設が鉄道・バス利用者の利便性を悪化させる構造になっています。

バス停は並列に配置

乗り換え距離が長い2つ目の原因は、タクシー乗り場や全てのバス停が一つの歩道に直列に並んで設置されているためです。このようなレイアウトになっている理由はバスなどの車両と歩行者を交差させないためと推測されますが、安全対策を行えば利便性と安全性を両立できます。
つまり、横断歩道以外は横断できないように高い柵を設けたり、横断歩道やバス車体にバス接近警報機等を付けてバス優先にしつつ最徐行することなどです。これによって、バス乗り場を並列に並べるなど一般的な配置にして、乗り換え距離を最小化できます。

なお、事故の懸念からバスと歩行者の交差するレイアウトを盲目的に禁止する意見もあります。しかし、バスの利便性の低下によって車の利用者が増えること、そして車の1台あたり事故率はバスの4倍7(一人あたりでは百倍以上)であること、つまりバスの利便性向上により車利用を減らす方が安全性向上に有効であることを考慮する必要があります。実際に、海外の都市では、トランジットモール(歩行者専用広場)内を路面電車や路線バスが走行し、歩行者は走行路を自由に横断できるようになっている場所が多くあります。

ホーム出入口を増設

乗り換え距離が長い3つ目の原因は、バス停が1階、ホームが2階にあるのにもかかわらず改札が3階にあることです(構内図の水色矢印)。このような配置になっている理由は、駅周辺の地形が傾斜地であることにより正面出入口が3階付近にあるためと推測されますが、改札を1つにする必要は無いため、バス停とホームを直結する通路と改札を新設することで歩行距離を大幅に短縮できます(構内図の燈色矢印)。

他の駅でも、ホームへの出入口(と改札)の数が少ないことで不便になっている場合が多数あります。このため、出入口をバス停の直近やホーム端部などに新設したり、新設した出入口近くに一部バス停を移設することで、周辺地域の利便性が大幅に向上したり、バス経路の短縮化や渋滞回避も実現できる場合があります。それによって、地価や家賃の上昇により地域経済や税収の改善も得られます。

鉄道駅同士の距離最短化、乗換駅新設 

異なる鉄道路線同士が近接や交差している場所は、近接して駅が設置されていて乗り換えができる場所が多いですが、駅同士が離れていたり、駅自体が無い場合もしばしば見られ、利用者の利便性を損ねています。
このような状態になっている理由として、かつて鉄道会社同士が競合していて他社乗客の流出を防ぐためであったり、乗り換え経路沿道にある商店の売り上げ維持のためなどがあります。これらの理由は利用者には無関係であり、むしろ公共交通の利用を抑制して車利用者を増やしてしまう効果が考えられます。また、公共交通利用者数と比較して非常に少数である鉄道事業者や商店の利益を優先することは不公平で社会の利益に反します。
このため、公共交通は公共の利益を最優先で考え、車に勝つことを共通目的として協力し、費用も行政が負担する公共事業として、駅の移設や新設を進めるべきです。

駐輪場もホーム出入口の直近に

また、センター南駅は駐輪場も遠く、一番奥からホームまで徒歩で約5分10秒かかります。さらに、チケットの購入や車体への取り付け作業が必要で、空きスペースを探すのも苦労します。定期券も購入方法が非常に難しくなっています。一方、駅周辺の全ての空きスペースは駐輪禁止になっており、毎日、警備員が違法駐輪を監視し、無骨なバリゲードや障害物が多数設置されている上に、警備員が居ない休日には無秩序な駐輪で溢れています。また駐輪場より近くに飲食店やマンション、ほとんど使われていないイベントスペースや広場、砂場?などがあります。
このように極めて不適切かつ税金の浪費状態になっている理由は、バス停と同様に商業施設を優先すると共に、駐輪自転車が美観を損ねるという旧態依然の考えが行政にあると思われます。

一方、車の使用抑制のために自転車の使用を強く促進させている都市が多い欧州などでは、歩道や車道上に無料の駐輪場を設置することが一般的となっています。つまり、歩行に支障の無い場所に整然と区切って駐輪させれば全く問題無いのです。
このため、ホームからの歩行距離が最も短く、歩行の支障にならないあらゆる場所に商業施設の代わりに無料駐輪場を設置し、そこへの自転車通路も確保すべきです。これにより、自転車から鉄道に乗り換える時間の大幅な短縮と監視員費用の削減、更には鉄道利用者の増加が可能となります。また、商業施設入口周辺にも駐輪場を設けることで、売上増加も可能となります。

バス停にも駐輪場を

また、バスや路面電車の停留所近くにも駐輪場を設置し、後述する短距離運賃の低減を行うことで、駐輪する自転車を分散させることが可能となり、鉄道駅周辺の駐輪場が不足が改善できます。また、バスや路面電車の利用者数の増加に繋がります。

やむを得ず停留所や駐輪場からホームまでの距離が遠い場合は、途中で増速する動く歩道8を設置するなど、時間短縮と労力削減の改善を行うことが必要です。

また、エスカレーターについても歩行は禁止すべきとの意見がありますが、幅を広くする9、又は狭い物を2本設置して片方は歩行専用とし、また段差も低くするなど、安全性を固定階段と同等に向上させれば歩行を禁止する必要性は無くなります。それにより、乗り換え時間が短縮され公共交通利用を促進する有効なツールになるため、歩行することを前提として再設計して活用すべきだと考えられます。

踏切の安全性向上

鉄道線路をバスや徒歩で横断して乗り換える場合、陸橋や地下通路よりも踏切の方が距離が短くて済みますが、現状の踏切は安全性に問題があり、2020年では173件の事故と124人の死傷者が発生している10ため、新設は禁止されています。このため、以下6点の改善を行って安全性を十分に確保すれば、列車の運行頻度が高くない駅においては、踏切を新設して乗り換え時間を短縮できると考えられます。

なお、十分な安全対策を行っても、故意の侵入など、踏切事故を完全に無くすことは困難ですが、それは踏切以外の柵やホームなどでも同様であると共に、事故率が鉄道の数百倍と言われる車からの転換を進めるた方が明らかに死傷者は減るため、踏切を活用して公共交通の利便性向上を図ることは必須であると言えます。

AI画像解析による高精度な障害物検知機設置

踏切改善の1つ目は、障害物検知機の高精度化です。現状では、踏切内に取り残された人を確実に検知できる検知機が少ないことが国会でも取り上げられており11、設置を促進する必要があります。なお、AIによる画像解析を使用した低コストのシステム12も開発されています。

確実に進入を防ぐ

踏切改善の2つ目は、進入対策です。遮断機をくぐって進入する人や、誤って侵入する車を防ぐため、竿を強固な可動柵に変更して容易に入れなくし、柵の内側には閉じ込められた場合の非常開ボタンを設けます。また、万が一、閉じ込められて出れなくなっても、既述の障害物検知機の高精度化を併せて行えば、柵を乗り越えたり壊したりする場合を除き、衝突は必ず回避できます。

人が介在しない非常ブレーキシステムに

踏切改善の3つ目は、異常検知時のブレーキ自動化です。現状の多くの踏切では、障害物や非常ボタンなどの異常を検知すると専用の信号が点滅し、それを列車の運転士が目視して手動で緊急ブレーキ操作を行っていることにより、判断遅れなどの人為ミスが発生する可能性が高くなっています13。このため、異常検知したら完全自動でブレーキをかけるシステムの普及を早急に進める必要があります。このシステムは小田急線14で既に採用されているようです。

レールの溝を塞ぐ部品が様々ある

踏切改善の4つ目は、レールの溝対策です。自転車や車椅子などの車輪がレールの溝にはまって移動困難になることを防ぐために、重量の大きい鉄道車輪の通過時にだけ凹む弾性部品で溝を塞ぐことが有効です。このような部品は様々なものが開発されており、早急に普及させるべきです。

踏切の道路幅が狭すぎる

踏切改善の5つ目は、脱輪対策です。踏切は短時間に多くの人が通行するにも関わらず、路面の幅が踏切以外の場所より狭くなっていたり、端が急激に落ちていることが多く、車椅子などが路外に脱輪することがあります。この対策として、路面の幅を十分に広げたり、路面の外側になだらかな傾斜を付けることが考えられます。
以前から脱輪事故は頻繁に発生しているのにもかかわらずこの様な容易な対策が行われていないのは、行政の明らかな怠慢だと思います。

距離が長い斜め横断を強いている

踏切改善の6つ目は、横断距離の最短化です。現状では線路を斜めに横断している踏切が多くあり、横断距離が長くなって歩行者が渡り切れなかったり、レールの溝に車椅子などのタイヤが嵌り易くなるため、横断部分を直角に近づけることが有効です。歩道だけを直角に変更する場合は必要な用地が非常に少なく、立体交差などに比べると圧倒的に実施が容易だと考えられます。

踏切を使えば鉄道とバスが並んで発着できる

上記の対策を全て(少なくとも上から3つを)行うことで、踏切の事故がほぼ発生しなくなり、安全性が道路の交差点と同等以上に確保されるため、乗り換え時間短縮のために踏切を積極的に新設すべきです。それにより、歩行者の階段昇降の時間や労力が無くなったり、相対式ホームの鉄道駅であれば列車の発着するホームに合わせてホームのすぐ横にバスを停車させることができるようになります。また、階段にエレベーターが無い駅ではユニバーサル性の面でも大きなメリットがあります。

ラストワンマイルモビリティの改善

速達性改善策の5つ目は、駅・停留所と出発・目的地間の交通手段(ラストワンマイルモビリティ)の改善です。これが無かったり容易に使えず、距離がある場合は、公共交通利用の大きな障害になっています。この対策として、個人の交通手段を停める場所を設けることや、レンタサイクルやシェアカーなどを用意すること、公共交通車両に自転車などを積載できるようにすることが一般的に考えられますが、これらラストワンマイルモビリティ関連の改善策について下記4点を提案します。

停留所に屋根付き駐輪場を設置

ラストワンマイルモビリティ関連の改善1点目は、自転車やシニアカー(電動カート)などのパーソナルモビリティを駐車できる駐輪場の改善です。バス停や電停には駐輪場が設置されてない場所が多く、設置すればバスなどの利用者が増えることが考えられます。土地が広く取れる場所では、4輪車用の駐車場を設置することも有効です。

また、悪天候時は駐輪している間の雨具の置き場に困ることがあります。また、屋根付きの駐輪場でも、雨具を干しておくと風で飛んだり、盗まれたりすることもあるので、駐輪場に風雨を防げる建屋を設け、通気性の良いロッカーを設けるなど、きめ細かい対応を行う必要があります。

屋根付き電動アシスト3輪自転車の普及

ラストワンマイルモビリティ関連の改善2点目は、車両の改善です。一般的な自転車は、雨に濡れ、転倒の恐れや荷物があまり積めないという問題があり、シニアカーは転倒の恐れは低いですが最高速度が6km/hと遅く、軽自動車や屋根付きミニカーは、雨に濡れず、転倒せず、荷物も比較的沢山積めますが、免許が必要で購入・維持費が高く、駐車スペースが大きいなどの問題があります。これらの長所だけを可能な限り実現するラストワンマイルモビリティを考えると、雨に濡れないための屋根を持ち、転倒防止と積載性のための3輪を持った電動アシスト自転車になると考えられ、様々な提案もされています。このような屋根付き3輪電動アシスト自転車を普及させれば、公共交通の利用促進に繋がると考えられます。

レンタル手続きを簡単に

ラストワンマイルモビリティ関連の改善3点目は、レンタル手続きの改善です。カーシェアリングやレンタサイクルなどは、利用する前に面倒な登録が必要であるものや、先の予約ができないものが多く、外国人など、初めて訪れた人が気軽かつ確実に使うことができない問題があるため、登録不要でクレジットカードだけで簡単に予約や決済ができるような仕組みを導入することが必要です。

低速ならレンタルモビリティを無人回送できる?

ラストワンマイルモビリティ関連の改善4点目は、レンタルモビリティの配車と返却の自動運転化です。出発地からレンタルモビリティを使う場合は車両を配送してもらう必要があり、また、目的地まで行って滞在する場合は車両を返却することができない問題があります。この解決策として、昨今開発が進んでいる自動運転技術を使い、使用開始場所や返却場所に無人で移動することが考えられますが、現在(2022年)の技術水準では、場所を限定せずに車や自転車の走行速度で自動運転させることは未だ困難です。しかし、限定したエリアかつ電動車椅子と同等の低速度であれば自動運転の実用化が進んでいるため15、3輪電動アシスト自転車を、事前に設定したエリア内での配車や返却時に限り低速度で自動運転させるのであれば、実現可能性があると思われます。

インフラやサービスを実費負担にして、都市のコンパクト化推進を

また、公共交通自体の対策ではありませんが、公共交通路線から遠い郊外で生活する人を減らし、都市をコンパクト化することも、間接的に公共交通を使った移動の速達性や利便性の向上に繋がることになります。
このためには、様々なインフラやサービス(道路、電気、ガス、上下水道、郵便、携帯電話、インターネット、新聞、宅配便、医療・介護の訪問・送迎、教育施設の送迎、公共施設、公共交通など)の使用料や財源となる住民税などを、郊外に住む人ほど高く、都市部ほど安く、段階的に変更していくことも必要だと思います。
なぜなら、インフラ利用者1人当たりの運用・維持コストは人口密度が低いほど高いと考えられるため、現状では都市部住民が郊外住民のインフラコストを負担している状態であり、公平な費用負担や、人口減少社会における費用増加抑制のためにも、郊外のインフラコストを高くすることはやむを得ないと言えます。

運行頻度向上や路線の拡充は潜在的利用者数に依存する

公共交通の運行頻度が高いことにより待ち時間が少ないことや、近くに公共交通の駅やバス停があることも、ドア to ドアの速達性向上に大きく寄与しますが、これらは潜在的な利用者数に依存します。
このため、既述した車費用の従量化や公共交通の改善策を行うことで潜在的な利用者数が増え、それによって運行頻度の増加や路線の新設が可能となると考えられます。

また、昨今問題となっている運転手不足についても、利用者数が増えて利益が増えることで運転手の待遇を大きく向上できるため、ある程度改善されると考えられます。

速達化によって運行本数を増やせる

公共交通の運行所要時間が短くなれば、始発停留所に短時間で戻って来ることになるため、車両・運転手の数が同一のまま、運行本数を増加できます。
それによって、利便性が向上し、利用者数や利益も増加することが考えられます。

収益性の改善策

公共交通は、速達性以外の大きな問題点として、収益性の悪さが挙げられます。公共交通を税金で補助することも必要ですが、税金が非効率的に使われることは問題であるので、様々な工夫で収益性を上げることが必要です。これについて、以下4点の改善策を提案します。

交通手段の統合・集約化

収益性改善の1点目は、交通手段の統合・集約化です。

人口密度が少ない地域において、利用者数の少ない複数の交通手段が並行して路線を維持・運行することは、非効率になるだけでなく、利用者の利便性も低下させていることが多くあります。例えば、鉄道や路面電車があるのに路線バスが並行していたり、路線バスと共に企業・学校の送迎バスが走っていることもよく見られます。

これらを、需要にあった手段にできるだけ集約することで、収益が改善すると共に、運行頻度増加により利便性も向上します。
なお、それによって乗り換えが増えたり、遠回りになることもあるため、既述の速達性改善も合わせて行う必要があります。利用者を集約すれば、快速便の運行も可能となります。

また、利用者の少ない鉄道を廃止してバスに転換する、つまり重複している線路と道路を道路に集約することも、路線維持のためにはやむを得ないことです。
ただし、最優先は車利用の抑制による公共交通への転換であり、それらが十分に行われた上での乗客数を基準に判断することが必要です。

また、鉄道からバスに転換する際に輸送力・運転手不足や所要時間増加、道路渋滞悪化が問題とされています。
しかし、輸送力不足に対しては、鉄道車両約1.5両分の定員の3連接バスや16、自動操舵するゴムタイヤトラム17、切離し可能なトレーラーバス、低床車より定員を増やせる高床バス18など、様々な輸送力増強対策があります。
た、既述の優先信号や優先レーンなどの速達化、車費用従量化などによる車抑制により渋滞解消とバスの所要時間短縮が可能であり、それによって車両の回転が早まり、更なる輸送力増加と運行コスト削減、運転手不足解消が可能となります。
また、ラッシュ時の輸送需要集中を平準化させることも輸送力不足解消や効率化には有効であり、学校などの始業時間の変更や、ラッシュ時の運賃を高くする変動運賃制導入などの対策も検討の余地があります。

また、鉄道、路面電車、路線バスそれぞれの特性(輸送力、速度、停留所間隔)に合わせて棲み分けすることも、効率化や利便性向上に有効です。効率、輸送力、速度、経済性、環境性、安全性が最も大きい鉄道を可能な限り優先して利用し、それを補完する形で輸送力に合わせて路面電車や路線バスを組み合わせて設置するべきです。 

また、山間部の長大橋梁やトンネルなど、建設・維持コストが高い鉄道施設を道路と共用して併用軌道(同一車線を車と鉄道が混走)とすることも、費用削減手法として検討の余地があると共に、経路短縮による所要時間短縮の可能性もあります。もちろん、鉄道の車体サイズを路面電車相当に縮小する必要はありますが、実現性はあると考えられ、鉄道を残せる可能性を増やすことができます。
なお、日本では併用軌道であっても車が軌道内を走れない場所が多いですが、海外では車と鉄道が混走する場所が多くあり、渋滞が発生しない場所であれば日本でも積極的に活用すべきだと考えられます。 

長距離移動では、鉄道と航空機や高速バスが競合している場所が多くあり、どれかに集約することも効率化の面で有効です。そして一般的に鉄道の運賃が一番高いために衰退していることが多いです。
しかし、高速バスが含まれる道路交通は利用者が直接負担していない外部不経済の費用が非常に大きく、また航空機も同様です。特に航空機は、地球温暖化への影響(CO2以外も含む)が鉄道の15倍以上19、騒音影響も排気ガス中の有害物質排出量も非常に大きく、飛行場設備や周辺住居の騒音対策にも多大な公的資金が使われています。このため、欧州などでは短距離フライトの規制や航空旅客税(環境税)の増額などが進められています。
このような外部不経済も含めた公正な運賃に変更することで、最も社会的悪影響が少なく費用が安い交通手段、つまり鉄道に自然に集約されると考えられます。

鉄道と車の外部不経済の比較については、以下の記事を参照ください。

運賃の適正化

収益性改善の2点目は、運賃の適正化です。
運賃は、受益者負担による公平性の観点から、運行経費を乗車人数で割って設定することが基本的に妥当だと考えられます。しかし現状では、多くの乗客が割高な運賃を支払って、一部の乗客の費用を負担している状態になっており、不公平であると共に、乗客減少の一因になっています。
これを改善して多くの乗客の運賃を下げられば乗客が増加し、全体として収益が改善されることが考えられます。
具体的には、短距離乗車時や定期券、学割、子供運賃、閑散区間が挙げられます。

距離制運賃にして短距離を安く

短距離乗車時は、初乗り運賃が高く、又は均一運賃であることにより、距離に対して割高になっており、また、これによって異なる事業者間で乗り換えをする場合や、鉄道とバスやバス同士を乗り継ぐ場合は更に割高になっています。
このようになっている理由は、かつて紙の切符や整理券を使用し、人による改札を行っていた時のコストを反映していると共に、均一運賃は車内での現金支払い時の時間短縮のためと推測され、現在主流のタッチ決済による改札ではほとんど意味が無いと考えられます。
公平性確保と乗り換えを含む利用の促進のためには、距離に応じた運賃に変更し、タッチ決済の場合だけでも短距離運賃を引き下げることが必要だと考えられます。

定期券を廃止して通常運賃を下げる

定期券は、一定期間において乗り放題になるため、利用頻度が高い人は割安になる制度です。つまり、定期券を持たない人が定期券利用者の運賃の一部を支払っていることになり、不公平です。また、定期券を買った後で在宅勤務や在宅授業を行うと損することもあり、定期券利用者にも使いにくい制度です。
定期券の元々の目的は切符販売や人による改札の工数削減と推測されるため、大多数がタッチ決済を使っている現状で意味は無いと考えられます。このため、タッチ決済の改札がある路線では廃止し、それによる増収分で通常の運賃を引き下げるべきです。これにより、利用頻度が高くない人の利用を増加させることができると考えられます。

子供・学生・高齢者・障害者割引は廃止して行政が直接給付

収入を得ることができない子供や学生、高齢者、障害者などに対し、経済的支援を行う必要性は当然あるものの、それは本来行政が行うべきもので、交通事業者の役割ではありません。また、一部の割り引きではなく、子供の保護者やその他経済的困窮者も含めて、必要な人には全額を支援すべきです。また、利用時の対象者であるかどうかの確認や、事業者ごとに必要な利用者の申請手続きなど、様々な労力や時間も発生していると共に、情報弱者は割り引きを受けられない可能性もあります。
このため、子供・学生・高齢者・障害者の割引運賃は廃止して、行政からの直接給付に置き換えるべきです。

閑散区間・時間の運賃アップ

人口密度の低い地域などの閑散区間や、利用者の少ない時間においては、乗客1人当たりの運航費用は高額になりますが、現状ではそれが運賃に考慮されていません。
実際の1人当たり運航費用を運賃に反映することで運賃は高額になりますが、その区間や時間の公共交通を維持できる可能性は高くなります。割増運賃の深夜バスも類似の考えであると言えます。

現金払い手数料

現金で運賃を支払う場合、タッチ決済と比較して、複雑な構造の現金授受機械や切符・整理券発券機械の設置、現金の回収・補充などのコストが発生し、また運転手が対応する場合はその労務コストや他の乗客の待ち時間が発生しています。
このため、それらのコストや迷惑を手数料として現金払いの運賃に上乗せすることが公平です。それによって現金支払い者が減り、停車時間が短縮される効果も考えられます。
また、信用乗車方式においては、その増収分で全ての無人駅や停留所に券売機を設置することが可能となり、現金支払い者の利便性も確保することができます。

全てのインフラ使用料を、実コスト+社会的コスト基準の従量制に

今後の超高齢化、人口減少社会においては、交通以外も含めた様々な社会インフラやサービス(交通、道路、電気、水道、ガス、通信、郵便、宅配、ごみ収集、教育、警察、消防、医療など)を現状のまま維持することは全く不可能であり、選択と集中が不可欠となります。それを進めるためにも、また公平性やエコの観点においても、それらを提供するために実際に必要なコストや社会的コストを利用者毎に正しく負担させることはやむを得ないと言えます。
つまり、維持管理に費用がかかり、利用者が少ない部分、例えば過疎山間部へのインフラやサービスなどは、使用料や住民税を大幅に高くし、また可能な限り従量制にすることです。
もちろん、これが過疎地の切り捨てになるという批判があることは理解しますが、使う人の少ない非効率なインフラを維持するために全国民の税金や各種サービスの負担がどんどん増加し、可処分所得が減って少子化も加速し、日本全体が衰退し続けてしまうことを容認することできません。

交通についても、定額使い放題に近い自家用車のコストを社会的コストを含めて公正な従量制にできるだけ近付けることで、高効率な公共交通を維持することができるようになります。

また、公共交通同士でも、高速バスや飛行機が鉄道と競合していて鉄道より運賃が安い場合が多いですが、社会全体の幸福のためには、無制限な自由競争ではなく、環境影響や死亡事故率など、社会的コスト総額に応じた原因者負担に基づく公平な運賃になるように、税制などで運賃に補正をかける(高速バスや飛行機を鉄道よりも高くする)ことも必要であると言えます。

赤字区間の税金での補填

収益性改善の3点目は、赤字区間の税金での補填です。

現状では、黒字区間の利益で赤字区間を維持している事業者も多く、黒字区間の乗客にとっては実際の運行経費より割高な運賃を払わされています。

本来、赤字の公共交通サービスを提供するのは民間事業者ではなく行政の役割であることから、赤字区間における赤字分は全て税金で賄うべきです。
それにより、黒字区間の利益を運賃の引き下げや利便性向上に使うことができ、車からの転換が促進されると考えられます。

なお、公共交通の競合相手である車のコスト構造が現状のように定額使い放題に近い状態で、公共交通に税金を投入することは、明らかに非効率で無駄遣いです。このため、車のコストを可能な限り従量化することも必須です。これについては、以下を参照ください。

商業施設事業者の負担による公共交通の整備

収益性改善の4点目は、商業施設事業者の負担による公共交通の整備義務化です。

大規模な商業施設や集積地域では、周辺道路に駐車場待ち渋滞や違法駐車が発生し、都市の交通機能に多大な悪影響を与えている一方、それにより商業施設事業者は多大な利益を得ています。このため、商業施設事業者の費用負担で周辺の公共交通を整備し、渋滞を抑制して交通機能を回復する責任があります。

具体的には、最寄りの駅から大型施設まで無料のバスを巡回させ、併せて駐車料金を高くすることで駐車場待ちの渋滞を抑制させることができます。また、それにより商業施設へのアクセス性や地域内の回遊性が高まることで、売上の増加も見込まれます。

最大の問題は行政の改善意欲の低さ

以上、公共交通の問題点と対策を提案しましたが、最大の問題点は、行政や公共交通事業者などが、車から公共交通への転換を進める意欲が低く、公共交通の競争力向上の必要性を認識していないことだと思います。以前、私の居住する横浜市の公営バス事業者にバスレーンなどの設置を要望したことがありますが、「遅延は発生していないので設置は不要」との回答で、現状以上の時間短縮は必要無いとの認識でした。また、横浜市は商業施設に駐車場附置義務を設けている一方で、ショッピングセンターへの無料シャトルバスは次々に廃止しています20。このような車使用を前提とした行政の意識を市民が変えさせることがまず必要であると思いますので、読者の皆様も行政や関係者に意見を繰り返し送るなど、ご協力いただけたら大変有り難く思います。

参考資料

  1. 東洋経済ONLINE 注目浴びる「路面電車」、実は非効率だった! ↩︎
  2. ウィキベディア トランジットモール ↩︎
  3. 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期 自動運転(システムとサービスの拡張) 地方部における自動運転サービスの社会実装の実現 並びにその恒久的実施に係る調査研究 - これまでの成果と課題等について – ↩︎
  4. 東洋経済ONLINE 富山LRT、直通運転で消えた便利な「セルフ乗車」 ↩︎
  5. YouTube Curitiba BRT ↩︎
  6. 日本道路 Plus Stop縁石 ↩︎
  7. 川邊健太郎 タクシー運転手の現状とタクシーに関する事故データ ↩︎
  8. YouTube 可変速式の動く歩道(加速編) ↩︎
  9. 日経ビジネス 「エスカレーターで歩くな」と無茶言う人の末路 ↩︎
  10. 内閣府 令和3年版交通安全白書 ↩︎
  11. 参議院議員木村英子オフィシャルサイト 2021.5.18国土交通委員会質疑『車いす利用者の踏切の安全対策について』 ↩︎
  12. 神戸新聞NEXT 切内の歩行者、AIで検知 山陽電気鉄道、2カ所に導入 ↩︎
  13. DIAMOND online 「京急踏切事故」はなぜ起きたのか、運転士の過失以上に重要なこととは ↩︎
  14. 未来へのリポート 小田急の新しい信号・保安装置「D-ATS-P」 ↩︎
  15. 株式会社ZMP 歩行速モビリティRAKURO ↩︎
  16. 産経新聞 全長30m、収容人数300人:ボルボがつくった「世界最長級のバス」 ↩︎
  17. Autonomous rapid transit (ART) ↩︎
  18. 公益財団法人ハイライフ研究所 都市の鍼治療データベース 166 クリチバのバス・システム ↩︎
  19. CO2排出量は鉄道の5倍、それ以外の影響がCO2の3倍(STAY GROUNDED↩︎
  20. 新横浜新聞 ららぽーと横浜への「シャトルバス」終了へ、鴨居駅やIKEAを結ぶ ↩︎

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